<スペック>
名前『ひろみ(仮名)』、東京の女子高生。
160cmくらい。
割と細身で、人懐っこい笑顔がとても可愛かった。
顔は優木まおみに似てた。
新宿で待ち合わせ。
会う前に電話してたので性格は把握してた。
どちらかと言うと、キャピキャピというよりおっとりした感じ。
ただ電話で、「私迫られると弱くて~w」みたいなことを言ってたのが気になった。
「じゃあ俺、襲っちゃうかもよw」
「ええ~w困るよぅ~w」
事前の会話はこんな感じ。
会った印象は、まだ中学生かと思った。
もともと童顔なんだろうが、まだ幼さが残るその顔で屈託なくケラケラと笑うその笑顔が、俺は大好きだった。
スカートこそちょっと短かったが、髪も黒く、まだスレてない、汚れを知らない、ひろみのイメージはそんな感じだった。
黒髪清楚系ってやつですね。
カラオケに行く約束だったので代々木のカラオケへ。
しばらく歌って、肩を抱いてみたら、「えへへ♪」の反応。
キスをしても拒まない。
胸を触って制服のスカートの下に手を入れると・・・。
「今日、生理だから・・・」
なんだ、仕方ない・・・と諦めかけたところ・・・。
「生でも大丈夫だよ♪」
(えっ?)て思ったけど、ひろみは「えへへ♪」と、例の屈託のない笑顔でこちらを見る。
さすがに病気も怖いし、生理中の生は好きじゃないので、持ってきたゴムをつける。
前戯はキスだけ。
会って30分足らずで、もう挿入してた。
挿入してる間、俺は色んなことを考えた。
ひろみの喘ぎ方は少しオーバーだった。
「あんっ・・・あんっ・・・」と腰を振るタイミングで大きな声を出す。
だが、前戯もなしに初めからそこまで気持ちいいとは思えない。
とは言え、悪意のある演技には思えなかった。
きっと他の男に、「そうしろ」と教わったのだろう。
この子が出会い系でセックスするのは、単に寂しいからなのでは・・・。
出会い系の男なんてみんな所詮セックス目的(俺含め)。
この子はそれを承知で、セックスしたくて仕方ないからじゃなく、ただ寂しくて、今俺の上で腰を振っているのかも?
喘ぐひろみを見て、そう考えたのを覚えている。
帰り際、ひろみは「カラオケすごく楽しかった~♪また遊ぼうね♪」とあの屈託のない笑顔で言った。
この子は別にセックスしたかったわけじゃなかったんだな・・・。
ただそれでも、『今日は楽しかった』って言えるひろみに、無責任に少し寂しく感じた。
その日はそこで別れた。
それから三ヶ月ほど経った。
その間連絡は取っていなかった気がする。
ある日、ひろみから連絡が来て渋谷で遊ぶことになった。
「俺君久しぶり~♪」
久しぶりの笑顔は変わっていなかった。
渋谷のカラオケに行く。
しばらく歌った後、キスをすると、まだひろみは笑顔だった。
だがスカートの中に手を入れると、表情が一変した。
ひろみのそんな表情を見るのは初めてだった。
「ゴメン・・・今日はエッチできないんだ・・・」
泣きそうな表情でひろみは言った。
「私・・・今、妊娠してるの・・・」
一瞬ドキッとしたが、相手は俺じゃなかった。
「こないだ会った人とね、中では出さなかったんだけど、ちょっとだけ生でしたら・・・、もうすぐ堕ろすんだけどね。だけど、お金だけ渡されて連絡とれなくなっちゃって、不安で・・・。エッチできないと、今まで遊んでくれてた人も会ってくれなくなって・・・。ゴメンね、エッチできなくて」
ひろみは泣いていた。
俺はひろみを抱き締めながらも、どうしたらいいか判らなかった。
はっきり言って俺は善人ではない。
出会い系も性欲の為にやってるだけだ。
でも、この子の胸の内を聞いた時、責任は取れないし、彼氏にもなる勇気もないが・・・、でも出来る限りこの子が望むことをしてあげようと思った。
中絶が終わった後も、ひろみとは半年に一回くらいのペースで定期的に会った。
しばらくしてからは、またセックスもするようになった。
もちろん避妊はちゃんとした。
彼氏が出来ても、ひろみは忘れた頃に俺に連絡をしてきた。
「俺くんは特別だから♪彼氏とは違うんだ」
ひろみに彼氏がいても、俺らはセックスをした。
ひろみには、「もう俺と彼氏以外とは絶対エッチするな」と会うたびに話した。
「うん!」と明るく話すひろみは、もう昔の屈託のない笑顔に戻っていた。
俺は彼女がいる時はひろみに会わないようにしていた。
別に正義感と言えるようなもんでもないが・・・。
ひろみもそれを分かってくれて連絡も控えてくれていたが、ある日のバイト中、池袋でいきなり知らないJKに声をかけられた。
「あの・・・俺さんですよね?私、ひろみの友達です。池袋で俺さんに会ったらこれを渡して欲しいって」
ひろみからの手紙とCDだった。
内容は・・・。
『俺くんに彼女ができたからもう会えないかも知れないけど、今まで本当にありがとう!辛い時にいっぱいいっぱい助けてくれて、本当に感謝してます。彼女さんとお幸せにね。私もいい男捕まえるぞー♪』
なぜか涙がこぼれた。
俺が何をしてやったのか・・・。
俺なんて結局、セックス目的の他の男と変わらないじゃねえか。
なのに、こいつは・・・。
結局その後、当時の彼女とも別れ、また定期的に会ったんだけどね。
だが、そんな関係にも終わりが来る。
出会ってからもう7~8年が経っていた。
ひろみは裕福な家庭の頭のいい子で、出会った当時は高二だった。
彼女も有名私立お嬢様学校に入り、航空会社のグランドホステスとして働いていた。
俺も大学を出てサラリーマンとして働いていた。
「私、結婚するんだ」
久しぶりの連絡だった。
最後に会う約束をした。
2年ぶりくらいだろうか。
平日だったが、彼女は夜勤明けで空港から会いに来てくれた。
彼氏の話や幸せな話を聞きながら、楽しい食事だった。
そして最後のホテルへ。
セックスしときながらなんだが、俺にとっては妹みたいな存在だった。
ひろみは一人っ子で、「俺くんがお兄ちゃんだったらなあw」とよく言っていた。
彼女の寂しがりはそこから来てるのかも知れない。
ホテルに入って無言でひろみを抱きしめた。
ひろみは泣いていた。
「・・・いっぱい・・・いっぱいありがとう・・・」
セックス中、彼女は泣くのを我慢しながら、笑顔だった。
お互いもう二度と会えなくなるのはなんとなく分かってた。
「フェラうまくなったでしょ~w彼氏も気持ちいいってw俺くんの教育の賜物だね♪ここが気持ちいいんでしょ?知ってるよ~w」
ただの性欲だけじゃない、けど恋愛感情とも違う、不思議な感覚だった。
「ねえ俺くん、ゴムはつけなくていいよ。今日はそのまま入れて欲しい」
あの時、なぜ断らなかったのかわからない。
俺はひろみとセックスする時は必ずゴムをつけていた。
優しさというにはあまりにも浅ましい、俺のちっぽけな偽善だった。
「最後だし、今日は大丈夫な日だから・・・これで赤ちゃんできたら奇跡だよw」
ひろみはあの笑顔で笑った。
出会ってから約8年、俺達は初めて何の遮りもなく、一つになった。
間もなく、ひろみは結婚した。
結婚してからもたまに連絡が来たが、俺は返信をしなかった。
もう兄離れの時期はとっくに過ぎている。
感情に任せて連絡を取っても、あいつにとって良いことは無いと勝手に考えていた。
ひろみも悟ったのか、しばらくして連絡が来なくなり、俺もひろみを思い出すこともなくなった。
そんなある日、メールが届いた。
『久しぶり!元気にしてる?あのね、俺くんに連絡したいことがあって・・・。私、妊娠したの。でも駄目だった。死産だったの』
メールはまだ続いていたが、俺はここで続きを読めなくなり、携帯を放り投げて泣き崩れた。
なんで・・・なんでコイツばっかりこんな目に・・・。
こいつは何にも悪いことなんてしてない。
人よりちょっと純粋なだけだ。
悪いのは俺みたいな性欲目的の男共じゃねえか!
それなのに・・・。
自分でも驚くほど涙が止まらなかった。
しばらく一人で泣き続けた。
そして涙が止まるのを待って、メールの続きを読んだ。
『でもね、もう大丈夫!もうあの頃みたいに弱くないからね♪旦那の稼ぎも悪いし、私が家庭を守っていかないと!バリバリ働いて、そのうちまた恵まれたら、元気な赤ちゃんを産みたいな。男の子だったら、もしかしたら俺くんと同じ名前にしちゃうかもw無断でごめんねw』
ああ、こいつはもう、あの寂しがり屋の妹じゃないんだ。
俺なんか居なくたって大丈夫。
辛い思いをした分、こいつはきっと幸せになれる。
最後に添付されていた、夫婦で撮った写真のひろみは、俺が大好きだったあの屈託のない笑顔だった。